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-多発性硬化症Q&A:病気・症状のこと-
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-多発性硬化症Q&A:病気・症状のこと-
多発性硬化症(MS)の「再発」とは、中枢神経に突然生じた炎症によって症状が24時間以上持続して起きている状態を指し[1][2]、概ね1ヵ月程度で治まる印象があります。
一方、MSの「進行」とは、再発がなくても症状が1年以上にわたってじわじわと変化している状態を指します[1][2]。
MSは多くの場合、再発(症状が出る)と寛解(症状が治まる)を繰り返す「再発寛解型」の経過をたどりますが、次第に再発がなくても体の機能の障害が徐々に進行していく「二次性進行型」の経過をたどるようになります。
このような症状変化は長い経過の中で起こるものであり、どこまでが再発寛解型で、どこからが二次性進行型なのかを正確に判断するのは実は困難です[1][2]。したがって、ほとんどの場合、「1年前と比べて症状が明らかに進行しているから、『二次性進行型』に進行している可能性がある」など、後になって二次性進行型と診断されることとなります[1]。
「進行」は、歩行時にふらつくなどの「歩行障害」として現れることが多い印象があります。
ご本人に歩きにくさの自覚がなかったとしても、「自宅から駅まで徒歩の時間が長くなった」「妙に疲れるようになった」など、日々の生活の中で少しずつ症状が変化していれば、進行している可能性があります。また、「頻尿」「残尿感」「尿が出にくい」などの排尿障害や性機能障害の変化も、進行の指標となる可能性があります。
「歩行に時間がかかるようになったのは年のせい」という見方をされるかもしれませんが、MSは加齢とは次元の違う速度で進行していく病気です。60歳代や70歳代でなければ、1年間で歩行速度が遅くなるほど筋力が低下する、ということは正直考えにくいと思います。
一方で、患者さんが診察室のドアを開け、主治医のそばまでの数mを歩行する様子を見ただけでは、主治医が歩行障害に気付かないこともあるかと思います。
したがって、通学や通勤、買い物など、毎日同じ場所に移動している方であれば、「自宅から駅まで」「自宅から会社まで」「自宅から近くのスーパーまで」徒歩で何分かかったか、医療機関受診時は「駅から病院まで」徒歩で何分かかったかなどを定期的に記録しておくと、ご自身の「隠れた進行」に気付くことができるかもしれません。
ただし、歩行速度や疲労は、季節やその日の気温にも大きく影響されますので、たった1回の測定で変化がみられても、すぐに「進行」とは判断せず、6ヵ月程度経過して季節が変わった後も同じ状態であれば、進行の可能性を考えます。なお、季節や気温の影響を受けないよう、可能であれば屋内の移動を指標にされるのもよいかもしれません。
【回答】慶應義塾大学 医学部 神経内科 教授 中原 仁 先生
日本神経学会 監修 『多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017』 医学書院 p114、116 2017年
日本神経学会 監修『多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023』医学書院 p20-21, 24 2023年