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多発性硬化症の情報サイト

現在のMSの治療の考え方

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MSの治療で大切なことは?[1]

多発性硬化症(MS)では、再発や進行を抑えるための治療と、症状を抑えるための治療が行われます。多くの治療薬の登場により、選択の幅が広がっています。

再発や進行を抑えるための治療を始めるとき、以前は長期的な安全性を考え、ベースライン薬とよばれる治療薬から用いる治療法(escalation therapy)を基本とし、MSの疾患活動性が高い場合に、早い段階から効果の高い治療薬を用いる治療法(early intensive therapy)を行っていました。しかし現在では、早い段階から効果の高い治療薬を用いるほうが、将来の再発リスクや障害の進⾏リスクを減らせることがわかってきたため、MSの治療の考え方は大きく変化してきています。

治療の歴史(2025年11月時点)

再発や進行を抑えるための治療薬として、日本では現在8種類が承認されています。多くの治療薬の登場により、患者さんの状態やライフスタイルに合わせて、より患者さんに合う選択ができるようになっています。

治療薬の日本での発売年月[2]

イメージ図:治療薬の日本での発売年月
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再発や進行を抑えるための治療とは?

  • 再発や進行を抑えるための治療は、MSの症状が治まっている(寛解)時にも行われます。
  • 飲み薬(カプセル、錠剤)や注射薬(皮下投与、筋肉投与)、点滴薬を使います。
  • お薬は、患者さんの状態(疾患活動性)、生活背景や価値観によって様々な選択肢があります。
    (例)薬剤によって病院で投与するものと、自宅で服用・投与できるものがあります。
イメージ図:再発や進行を抑えるための治療
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症状を抑えるための治療とは?

  • MSの症状が急に出ている時の治療は、再発の際に、ミエリンで起こっている炎症を鎮め、症状を速やかに抑える治療です。
  • MSの症状を和らげるための治療では、再発が終わって寛解となっても症状が完全に治まらず残ってしまう場合に、それぞれの症状に応じたお薬などを使います。
「症状が急に出ている時の治療」 ステロイドパルス療法:ステロイド剤を点滴で大量に投与します。 血漿浄化療法:ステロイドパルス療法の効果がみられない場合、血漿を浄化して再発に関わる物質を取り除く治療です。 「症状を和らげるための治療」 飲み薬などで行う治療:痛み、感覚の異常、脱力、うつなどの症状 運動機能の制限や維持に対する治療:リハビリテーションを行い、生活における障害を軽減させます。

再発や進行を抑えるための治療をしっかりと継続していくことが重要です。
医師と相談しながら決めていきましょう。

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MSは、治療をしないとどうなるの?

多発性硬化症(MS)は治療せずに放っておくと、脳の容積が減少(脳萎縮)し、脳萎縮の進行とともに、認知機能障害(集中力・理解力・記憶力の低下など)が現れることも少なくありません。

MSは多くの場合、「再発(症状が出る)」と「寛解(症状が治まる)」を繰り返します。しかし、症状が治まっている寛解期であっても、MSが治ったわけではなく、水面下ではミエリンの障害(脱髄)や神経細胞自体の障害(変性)が持続しているといわれています。
そのため、MSを治療せずに放っておくと、体の機能の障害が徐々に進行してしまうことも少なくありません。

MSによる障害の進行[イメージ図]

MSは治療せずに放っておくと体の機能の障害が徐々に進行する
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障害の進行って、抑えられるの?

MSは多くの場合、「再発(症状が出る)」と「寛解(症状が治まる)」を繰り返します。そのため、再発を抑える治療をせずに放っておくと、体の機能障害が進行・悪化してしまうことも少なくありません。
しかし、“早いうち”からMSの治療を始め、それを継続して行うことで、障害の進行を抑えることが期待できます。

再発を抑える治療をしない場合
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多発性硬化症(MS)を治療しないでいた場合

再発を抑える治療を始めた場合
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多発性硬化症(MS)の治療を始めた場合

早いうちから再発を抑える治療を始めた場合 [イメージ図]

多発性硬化症(MS)の治療を早いうちから始めた場合

再発寛解型から、再発がなくても体の機能の障害が徐々に進行していく「二次性進行型」(SPMS)に移行したとしても、今度はSPMSに対する治療を早いうちから始め、それを続けることが重要です。

「再発寛解型」および「二次性進行型(SPMS)」については、こちらを参照

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MSは完治しますか?

MS自体を完治させる、言い換えれば根本的に治す方法はないのですが[1]「再発や進行を抑えるための治療」を続けることで再発回数を減らし、症状が出ていない状態を長く続けられる可能性はあります。

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MSによって引き起こされる障害を軽くするために、できることは?[3]

障害を残してしまったとしても、リハビリテーションで、生活における障害の軽減が期待できます。

MSの治療で大切なのは「相談」

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自分から医師に聞いてもいい?[3]

MSの治療は長期にわたります。そうなると、医師との関係が大切になります。そして、医師自身も患者さんと二人三脚で治療を進めていきたいと考えています。

まずは医師にわからないことや気になっていることを聞いてみましょう。また、医師に言い出しにくい場合は、看護師に話してみるのも方法の1つです。

多発性硬化症(MS)の治療で大切なのは「相談」
  1. 日本神経学会 監修『多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023』医学書院 p4, 158-160, 2023年

  2. PMDA 医療用医薬品 情報検索ホームページ:https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/

  3. 深澤 俊行 編 『やさしい多発性硬化症の自己管理 改訂版』医薬ジャーナル社 p54-55 2016年

もっと、MSについて聞いてみよう。

総監修
医療法人セレス さっぽろ神経内科病院 理事長 深澤俊行 先生

多発性硬化症や視神経脊髄炎などの神経難病に対する診療・研究を行う神経内科医。2007年に医療法人セレスを設立し、現在は理事長を務める。患者さんが社会や地域でよりよい生活を送ることを重視した診療を目指している。
【著書】やさしい多発性硬化症の自己管理/医薬ジャーナル社/2016(編)

メディカルノート:深澤俊行先生