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高コレステロール血症の情報サイト

  • 家族性高コレステロール血症(FH)は、生まれつきLDLコレステロールが体内で処理されにくい遺伝性の病気です[1]

  • FHの場合、血液中の総コレステロール値が正常な人の2~4倍に達することがあります[2]

  • 通常の高コレステロール血症よりも心筋梗塞などのリスクが高いことから、FHの可能性を再確認し、適切な治療を開始することが重要です[3]

家族性高コレステロール血症は早期発見と治療が大事

家族性高コレステロール血症(FH)は遺伝性の病気で、適切な治療を受けずに放っておくと心筋梗塞・不安定狭心症などの冠動脈疾患を若くして発症するリスクが高まります[4]。すでに高コレステロール血症と診断され、さまざまな対策を講じているにも関わらずLDLコレステロール値が下がらない場合、このFHの可能性も視野に入れることが大切です。ここでは、FHの基本的な情報から、ご自身の状況を再確認し、適切な治療へ繋げる重要性について解説します。

FHとは?

特徴

FHは、「LDLコレステロール値が高いこと」、「若いうちに冠動脈疾患を起こすリスクがあること」、「アキレス腱や皮膚などに黄色いふくらみ(黄色腫)ができること」の3つが特徴の遺伝性の病気です[4]。遺伝子の受け継ぎ方によって、①ヘテロ接合体FH(HeFH)と②ホモ接合体FH(HoFH)の大きく2つの種類があります[5][6]

患者数

①HeFHは一般人口の300人に1人程度に認められるとされています[4]。②HoFHは36~100万人に1人以上の頻度で認められるとされ、難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)で指定難病に認定されています[7]

原因

FHは、LDLコレステロールの代謝に関わる遺伝子の異常によって起こります。通常、LDLコレステロールは肝臓の「LDL受容体」によって血液中から回収されますが、FHではこの受容体がうまく働かず、血液中にLDLコレステロールが溜まりやすくなります[5]

遺伝形式

「常染色体顕性(優性)遺伝」の形式をとります[2]
この遺伝形式では、両親のどちらか一方でもFHの原因となる遺伝子を持っている場合、お子さんには50%の確率でその遺伝子が伝わり、FHを発症する可能性があります[8]

つまり、両親どちらか一方にFHがある場合、生まれてくる子どもがFHになる確率は、2分の1ということです。遺伝子の変化は性別に関係なく受け継がれます[8]

遺伝子の受け継ぎ方とFHのタイプ

FHの原因となる遺伝子の受け継ぎ方で、①HeFHと②HoFHの大きく2つのタイプに分かれます[9][10]

①の場合、両親のどちらか一方からFHの原因となる遺伝子を、もう一方の親からは正常な遺伝子を受け継ぎます。多くのFHの患者さんがこのタイプに該当します[8]。コレステロール値の上昇程度には個人差があり、血液中の総コレステロール値が正常な人の約2倍となることを示した報告があります[2]

②の場合、両親のどちらからも、FHの原因となる同じ遺伝子を受け継ぎます。このタイプは非常にまれですが、コレステロール値が著しく高くなり動脈硬化の進展が著しく早い傾向があります[8][9]。血液中の総コレステロール値が正常な人の約4倍を示した報告があります[2]

診断方法

すでに高コレステロール血症と診断されている方も、以下のFH診断基準に当てはまる項目がないか、改めて確認してみましょう。15歳以上のFHは、以下の基準で診断されます[11]

1.未治療時のLDLコレステロール値が180mg/dL以上
2.手の甲、肘、膝、アキレス腱、皮膚などに黄色いふくらみがある(腱黄色腫、皮膚結節性黄色腫)

イラスト:家族性高コレステロール血症(FH)に見られる黄色腫

3.家族に早発性冠動脈疾患の診断または既往歴がある(家族歴)

上記で当てはまる項目がある場合は、自己判断せず医師に相談し、適切な診断と治療方針の再検討を行うことが重要です。

治療法

まずは食事療法、運動療法、禁煙、肥満対策などの生活習慣の改善に取り組みますが、それだけでは十分な改善が得られない場合が多く、薬物療法の併用が勧められます[9][10]
FHは心筋梗塞などを起こすリスクが通常の高コレステロール血症よりも高いため、早い段階からより強力な治療が必要になることがあります[9][10]
どのように治療を進めるかは、主治医と相談しながら決めましょう。

LDLコレステロールの目標値

FHの管理目標値は、HeFH、HoFHともに、一次予防(心筋梗塞などを経験していない人の予防)は100mg/dL未満、二次予防(心筋梗塞などを経験したことがある人の予防)は70mg/dL未満を考慮するとされています[9][10][12]

食事療法

食事療法は、通常の高コレステロール血症と同様に、FHにおいても行うことが重要です[10][12][13]
脂質の多い食事を控え、食物繊維が含まれている食べ物を積極的に取るようにしましょう。食物繊維はコレステロールの吸収を抑える効果があります。

明日もイキイキごはん

イラスト:高コレステロール血症の方の食事療法

運動療法

FHの患者さんも、運動療法を行うことが推奨されています。ただし、動脈硬化が進んでいる可能性もあるため、どのような運動が望ましいかを事前に確認しておく必要があります[14]。主治医に相談し、自分に合った運動を開始するとよいでしょう。

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イラスト:高コレステロール血症の運動療法

薬物療法

FHも高コレステロール血症と同じ薬剤などが選択されますが、FHは心筋梗塞などの冠動脈疾患を起こすリスクが通常の高コレステロール血症よりも高いため、早い段階からより強度の強い薬剤や投与量が選択されることがあります[3]

参考

  1. 日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. p160.

  2. 日本動脈硬化学会. 成人家族性高コレステロール血症診療ガイドラインフォーカスアップデート2025. p6.

  3. 日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. p136.

  4. 日本動脈硬化学会. 成人家族性高コレステロール血症診療ガイドラインフォーカスアップデート2025. p2.

  5. 日本動脈硬化学会. 成人家族性高コレステロール血症診療ガイドラインフォーカスアップデート2025. p4.

  6. 日本動脈硬化学会. 成人家族性高コレステロール血症診療ガイドラインフォーカスアップデート2025. p5.

  7. 日本動脈硬化学会.医師向け:家族性高コレステロール血症(FH)について.3病態.

  8. 日本動脈硬化学会. 成人家族性高コレステロール血症診療ガイドラインフォーカスアップデート2025. p11.

  9. 日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. p162.

  10. 日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. p163.

  11. 日本動脈硬化学会. 成人家族性高コレステロール血症診療ガイドラインフォーカスアップデート2025. p10.

  12. 日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. p161.

  13. 日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. p155.

  14. 日本動脈硬化学会. 成人家族性高コレステロール血症診療ガイドラインフォーカスアップデート2025. p14.

監修:
上妻 謙(こうづま けん)先生

帝京大学医学部内科学講座主任教授・循環器内科教授。総合内科専門医、循環器専門医、日本内科学会専門医制度審議会専門委員、評議員、日本循環器学会理事、日本心血管インターベンション治療学会理事長なども務める。

写真:上妻 謙 先生