さまざまな患者さんの 話を聞いてみよう
-多発性硬化症(MS)と診断されたあなたへ-
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岩手県在住の佐々木忍さん(45)が多発性硬化症(MS)と診断されたのは2020年8月のこと。
体の異変は、最初は手指の感覚が鈍くなる感覚障害から始まり、次第に感覚の異常が下半身にも広がっていきました。
そんな状況でも、病気になったことを嘆くばかりではなく、
「できないこともある自分を許し、受け入れると楽になります」と語る佐々木さん。
現在、「毎年1つ、国家資格を取得する」という目標を立て、スキマ時間に勉強に励むなど
エネルギッシュな日々を過ごされているそうです。
佐々木 忍さん(45歳) 岩手県
~同じ病気を抱える方にメッセージをお願いします~
時には、落ち込むことはあります。気分が沈んでいる時に、無理して元気そうな人を見なくてもいい。できないことがあっても自分を許し、受け入れれば、気持ちがもっと楽になると思います。
「ありのままの自分でいればいいのでは」とお伝えしたいです。
確定診断の1年前の8月、手指の触覚が鈍くなり、10月には椅子に座って首を前に倒すと、下半身にじわーっと電気が走るようなしびれる感覚がありました。年が明けると、今度は排尿の感覚がなくなりました。尿意はあっても出ている感覚がなく、排尿が終わったかどうか、自分では分からないのです。終わったと思って立ち上がると、脚に垂れてきたり。
これはおかしいと思ってインターネットの医療相談を利用すると、脳神経内科を受診した方がよいと助言され、翌日すぐに行きました。MRI(核磁気共鳴画像)で第二頸椎に卵円型の白い影があり、入院して精密検査と治療を受けました。
退院からしばらくしてMRIを撮ると脳の病巣が増えていて、MSと確定診断されました。自分でも予想できていたので、「すぐに命に関わる病気ではないけれども、一般の人よりは生きづらいかな」と思う程度でした。
手指の感覚が戻っていないので、温かいものは平気ですが、氷水のように冷たいものに触るとすごく痛みを感じます。飲みたくても、痛みを我慢しなければいけません。診断前からあった椅子に座って首を曲げた時のしびれる感覚も消えていません。
腕や胸、太ももの感覚異常があり、前に進みたいのに左足が突然止まってしまいます。一歩を踏み出せず、気持ちだけが前に行くので転んでしまいます。
手足に力が入らず、感覚がないので、重い物を持つとうまく掴めず、するっと落ちるんです。味噌汁のお椀を持つと、こぼしてしまいます。周囲の人の(醸し出す)「またやってるよ」という空気が最初は嫌でしたね。
「感覚のない自分」には慣れましたが、バッグの中の物を探す時、何を掴んでいるのか分からないので不便です。ただ、そのようなことを考え出したらきりがないので、不便なところをいかにカバーするかを考えるようになりました。一時は、字が書けなくなってしまったのですが、最初の入院中に『論語』の書き写しを続け、再び書けるようになりました。
以前から、孔子の教えから学ぶことは多いと感じていました。退院後は読書を1日1冊、年間300冊を目標とする中で、論語の書写も行いました。仏像を模写する「写仏」も趣味の1つです。
基地に行って飛行機を見たり撮影するのを楽しむ“空活”です。近くは松島(宮城県)、遠くは3時間かけて三沢(青森県)まで車で出かけます。スポーツ観戦も好きで、MSになる前と変わらないペースで野球を観に行きます。御朱印集めに神社に行くのも趣味の1つです。
私は他の免疫系疾患も持病としてあるので、外出時は直射日光を避ける必要があり、顔や腕を黒い布で覆うなどの対策をしています。一方、MSの症状悪化を防ぐため、暑いと感じたら日陰で休む、冷たい水を飲むなどして体温を上げない工夫をしています。
病気になってからアクティブになりました。1日24時間では足りなくて、時間をどう割り振ろうか、どう使うか。病気だからとへこたれている時間がないですね。活力の1つは、SNSでつながった同じ病気の方との交流で、趣味の話などでモチベーションを高めてくれます。「いつかMS患者のオフ会をやりたいね」と話しているところです。
MSと分かってから決めたことがあります。1年に1つずつ、国家資格を増やしていくことです。診断されて5年目ですが、消防設備士や宅地建物取引士など、5つ取得しました。病気にも自分にも負けたくないですし、病気のせいにして何にも挑戦しない自分も嫌なのですよね。
父が経営するプロパンガスの会社で働いているので、消防設備士は仕事と関係があります。次世代エネルギーとして水素が注目されるなかで、時代が水素に動いた時を見据えて、水素ガスを扱える国家資格も昨年取りました。ガス会社の仕事はエッセンシャルワーカーということもあり、休みは日曜日だけなのでけっこう働いています。
平日は目が覚めるのは朝5時頃ですが、そこで起きてしまうと夕方に「充電切れ」のようになって倦怠感に襲われるので、2時間くらいごろごろとしています。朝9時に会社に行き、夜7時まで勤務し
ます。
終業後は、夜7時から家族3人揃って会社の事務所で夕食をとり、テレビのニュースを見ながらその日の株価などについて父と議論します。食事が終わったら資格取得のための試験勉強をし、帰宅後は洗濯をし、肌の手入れをして寝ます。
休日は地元の公共施設の自習室で朝9時から夜6時頃まで勉強しています。周りはほとんど高校生ですが、社会人もいて、自宅でやるより刺激になります。いま取得を目指している行政書士は、一説には、800時間の勉強が必要とのことです。その時間を確保し、試験科目となる法令を完璧に理解しなければなりません。