小さな違和感も見逃さず、ご自身のために通院を
「案外知らなかった」「久しぶりに見たら以前と変わっていた」なんて思ったことはありませんか?「たぶん大丈夫」の「たぶん」を忘れて、これから先も「あなたらしい毎日」を過ごせるように、気にはなっていても後回しにしている体調のことを医師に相談してみませんか。久しぶりでも、初めてでも、安心して受診してください。
最近、こんなこと気になっていませんか?
例えば「手足がしびれる」「漠然とした不安がある」「階段や段差でつまずきやすくなった」など、小さな違和感や体調の変化が、実は多発性硬化症の「再発」サインということも。「気になることチェックリスト」を使って、今あなたが気になっていることを整理して、医師に伝えてみましょう。あてはまることにチェックを入れるだけ、1分ほどで相談した方がいい内容をまとめることができます。
継続的な通院・治療が大切な3つの理由
多発性硬化症は「再発」と「寛解」を繰り返すから
多くの場合、新たな症状が出たり、既存の症状が悪化する「再発」と、症状が治まる「寛解」を繰り返します。「再発」を更年期障害や別の病気と勘違いしたり、対症療法を試していませんか?「寛解」を「完治」だと思い込んでいませんか?医師とともに、適切な治療をすることが大切です。
症状がなくても、進行する可能性があるから
今は症状がないからと、自己判断で治療を止めてしまっていませんか?症状が治まっている「寛解」時でも、実は進行して「再発」するケースも。また「再発」を繰り返すうちに、「再発」がない時にも身体機能の障害が徐々に進行していく「二次性進行型」の経過をたどるようになることが少なくありません。
知らなかった治療法に出会えるかもしれないから
治療の選択肢は年々増えており、あなたが多発性硬化症の診断を受けたころから、状況が変わっている場合もあります。まずは、あなたの状態やライフスタイルについて医師に話してみませんか。複数の選択肢の中から、あなたに合った最適な治療法が見つかるかもしれません。
通院にあたって
一人で抱え込まずに、医師との対話から正しい情報を
多発性硬化症は遺伝するなど、誤った認識をしていませんか?多発性硬化症の発症には遺伝的要因の関与も指摘されていますが、いわゆる「遺伝病」ではありません[1]。他の患者さんが発信しているSNSやブログなどの情報を、安易に受け入れていませんか?悩みごとはもちろん、疾患や治療について知りたい場合も、一人で抱え込まず、医師に聞いてみましょう。通院前に「気になることチェックリスト」を使って、今のあなたの状態を客観的に整理すれば、限られた診療時間でも落ち着いて相談できるはずです。
通院は、多発性硬化症の専門医がいる脳神経内科へ
治療を進めるうえで大切なことは、専門医とともに、あなたに合った治療法を話し合うことです。多発性硬化症の専門医の多くは、脳神経内科(旧名称:神経内科)に在籍しています。かかりつけ医に紹介状を書いてもらう場合は、「専門医の意見も聞きながら、今後の治療について相談したい」や「より専門性の高い医療機関で、一度詳しく診てもらいたい」などと相談してみましょう。お願いしにくい内容かもしれませんが、専門性の高い医療を受けるための手段ですので、あなたが遠慮する必要はありません。
通院を再開した患者さんの体験談
多発性硬化症と診断されて治療を開始した後、症状が落ち着いたことで、通院を続ける意義を感じにくいという方もいらっしゃいます。あてはまるようであれば、他の患者さんの疾患との向き合い方を参考に、ご自身の体調を振り返るきっかけにしてみませんか。
見過ごしていた違和感。再び多発性硬化症と向き合い通院再開を果たすまで(Mさん、40代・男性)
19歳で多発性硬化症と診断されましたが、数ヵ月で症状が落ち着いたこともあり、「もう大丈夫」と思うようになりました。足に少し違和感があっても、生活に支障はなかったので、自己判断で通院をやめ、病気のことも意識しなくなっていきました。
転機は40代です。これまで感じていた違和感が、ふらつきや手の感覚の異常といった、気になる症状としてあらわれるようになりました。そうした症状が続き、あらためて病院を受診しました。そのとき、かつて多発性硬化症と診断されたことや、「落ち着いても、また症状が出ることがある」と説明を受けていたことを思い出し、忘れていた多発性硬化症の存在がよみがえってきました。
同じ頃、患者団体のホームページや講演会を通じて、他の患者さんの話を聞く機会が増えました。あらためてこの病気について知ることができ、「こういう症状があったら、こうした病気の可能性があるかもしれない」といった情報に触れられることの大切さも実感しました。
今は通院を再開し、生活スタイルに合った治療法を選んで定期的に通っています。また、主治医に任せるだけでなく、食生活や運動、睡眠、ストレスの管理に加えて、リハビリも続けるなど、自分でできることにも前向きに取り組むようにしています。 当時を振り返ると、生活に無理があった時期と症状が気になる時期が重なっていたように感じます。 そのため、生活や環境を見直すことが、治療と向き合う上でプラス になるのではないかと思うようになりました。主治医との関係は良好で、わからないことや不安なことを相談できるからこそ、「気になることは相談してみよう」と思うようになりました。これからも治療を続けながら自分らしい生活を続けていきたいと思っています。
あなたに合った通院の形を考えてみませんか?
聖マリアンナ医科大学 櫻井先生からのメッセージ
私たち医師は、患者さんとの対話を通して、適切な治療を提供したいと考えています。しかし、近くに専門医がいない場合や遠出が難しい方などもいらっしゃると思います。近年では、遠隔地からオンライン診療※を受けられる病院も増えているので、通院負担を減らす選択肢の一つとして検討してみてください。
※高度な検査の実施時や症状によっては、直接受診が必要な場合があります。詳しくはオンライン診療を実施している医療機関にご確認ください。
櫻井 謙三先生
聖マリアンナ医科大学 脳神経内科 講師。多発性硬化症の患者さんに寄り添い、YouTubeでも疾患の特徴や治療などについてわかりやすく情報発信をなさっています。
生活や仕事、医療費のことなどを相談するなら
都道府県や指定都市に、難病相談支援センターが設置されています。センターでは、病院選びなどの療養相談、経済面や各種公的手続きなどの生活相談をはじめ、様々な相談に応じてくれます。詳しくは相談支援窓口についてをご覧ください。
また、対象条件に該当する多発性硬化症の患者さんは、治療にかかる医療費について、自己負担分の一部が公費で助成されます。詳しくは医療費助成についてをご覧ください。
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日本神経学会 監修『多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023』医学書院 p4-6 2023年