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加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)の情報サイト

加齢黄斑変性の理解を深める1時間!
あなたの眼の状態をきちんと把握できるようになるために

2022年12月15日 オンライン開催

本講座における講演やパネルディスカッションの内容を抜粋・編集してご紹介します

講演 加齢黄斑変性とうまく付き合うために ~検査で分かること~

兵庫医科大学 眼科学講座 主任教授  五味 文 先生

加齢黄斑変性は早期発見が重要

世界的に増加傾向にある加齢黄斑変性ですが、特にアジアでは、今後、患者数が増加すると予測され、2040年には現在の患者数の1.5倍になると試算されています[1]。加齢黄斑変性は、加齢によって、網膜の中でものの形と色を見分ける「黄斑」と呼ばれる部分に障害が起こり、見ようとする場所が見えにくくなる病気です。黄斑のすぐ下に、もろい血管(新生血管)ができ、そこから水分(滲出液)が漏れてたまったり出血を起こしたりする「滲出型」、黄斑の細胞が傷む「萎縮型」があります。

加齢黄斑変性が怖いのは、視力が急激に悪化するケースがあることです。大幅な視力低下が起きるのは発症から1年以内が多い印象がありますので、早期発見が重要です。

加齢黄斑変性と診断されたら大切なのは病状の確認

異常に気づいて眼科を受診されたら、いつごろから、どのような見え方の変化が生じたのかを医師に伝えてください。若い頃に同じような症状が出たことがなかったか、特に中心性漿液性脈絡網膜症という、黄斑の病気にかかったことがある方はそれもお伝えください。喫煙の有無、全身疾患や内服しているお薬もお知らせください。

医師は、患者さんの加齢黄斑変性が、治療をすべき「滲出型」か、現時点では治療法のない「萎縮型」か、を判断するだけでなく、滲出型の中でも勢いが強い、活動性の高い病態かどうかもチェックしています。病気の活動性が高い状態、つまり、新生血管ができる勢いが強く、網膜や視細胞を障害してしまう状態では、視力低下のリスクが高くなっているので、早めに治療する必要があります。一方、見えにくくなってから時間がたっている、逆にあまり見え方に変化がないといった場合には、治療の開始を見合わせることもあります。

ご自身の加齢黄斑変性が萎縮型と判断された場合でも、それが後で滲出型に変わることがありますので、定期的にチェックを受けられた方がよいでしょう。萎縮型に対しても、いろいろな治療法の開発が試みられはじめています。

加齢黄斑変性の病変や活動性が可視化できるOCT検査

加齢黄斑変性の病状の判断には、視力検査やアムスラーチャート、眼底写真などのほかに、光干渉断層計(OCT)という検査を用います。OCTは黄斑部の網膜、網膜色素上皮、脈絡膜の断層像を撮影するもので、網膜のむくみや網膜と脈絡膜の間の出血や滲出液の有無、細胞の障害の有無などを一目で確認できます(図)。短時間に行えて、痛みもないので、病状の確認を効率よく行える大切な検査です。患者さんにその日の検査画像を見て頂き、黄斑部の形がこんなに悪かったのか、あるいは治療によってこんなに良くなったのか、と実感してもらっています。

図. OCT検査画像 (五味先生ご提供)加齢黄斑変性では、網膜色素上皮の上下に滲出液や新生血管があるのがわかる

抗VEGF療法における視力維持のポイントは適切なフォローアップ

滲出型加齢黄斑変性の治療として、日本では2003年に光線力学的療法とよばれるレーザー治療が、2009年から抗血管新生薬(抗VEGF薬)が導入されました。

抗VEGF療法は、眼の中に抗VEGF薬を注射することにより新生血管ができる勢いを抑え、出血や滲出液を減らして網膜への障害を減らす治療法です。抗VEGF薬による治療を行った場合と無治療の場合を比較した臨床試験において、無治療では視力が低下したのに対し、治療を行ったグループでは視力が改善し、その後、維持されたという結果が出ています[2]

視力の改善効果は治療の開始当初が最も高く、視力が良くなり続けている間は継続して投与することが推奨されています(導入期)。そして、視力が上がってからは、その状態を維持するために、適宜間をあけながら追加の治療をします(維持期)。決まった間隔で注射をする方法もありますが、視力やOCT検査の結果をもとに、患者さんの状態に合わせて注射の間隔を調整することが多くなっています。治療を受けられたとしても、完璧に発症前の見え方に戻るわけではなく、また活動性が強い場合には、進行が止まらないこともあります。逆にいったん病状が安定しても、治療の間隔を空けたり中断したりするとまた悪化することがあります。自身の病状を医師にお尋ねいただきながら、ご納得のうえで治療を受けてください。

受診を継続することが大切

注射薬は高額ですし、通院も面倒です。だからといって、自己判断で受診を止めないようにしてください。順調に回復して、「次に悪くなってもまた注射を受けたら見えるようになるだろう」と考えて通院を中断すると、今度はもっと深刻な状態になり、視力が回復しないこともあります。加齢黄斑変性は反対の目にも発症することがあります。「あのとき受診していたら」ということのないよう、患者さんには、眼科受診を続けてくださいねとお伝えしています。
※症状の経過は患者さんによって異なります。

眼を守るために患者さんができること

自分の眼を守るために、ご自身でできることはいろいろあります。日ごろから、アムスラーチャートなどのツールなどを使って自分で見え方をチェックする、喫煙をやめる、不規則な生活リズムや食習慣を見直す、高血圧などの生活習慣病の治療を行うなどです。医師と相談してサプリメントを摂っていただくのもよいでしょう。

加齢黄斑変性の患者数はこれからも増えると予測されていますが、新しい治療法の開発も進められています。どうしても見えにくくなったら、ルーペなどのケアグッズも使ってみてください。病気とうまくつきあいながら、より長く見える機能を維持していただければと思います。

「WEB市民公開講座」記録集のPDF版はこちら

  1. Wong WL, et al. Lancet Glob Health. 2014; 2(2): e106-116

  2. Rosenfeld PJ, et al. N Engl J Med 2006; 355(14): 1419-1431