つらかったこと、受診を決めたきっかけ、治療を続けるなかで感じたこと。
慢性特発性じんましんを経験した患者さんに、症状と向き合ってきた道のりを聞きました。
じんましんの原因を探し続けた2年間。
“症状が出ない毎日”を目指せると知って、前を向けた
安藤 奈名子(fumi)さん
「慢性蕁麻疹 闘病ブログ」ブロガー
2019年に慢性特発性じんましんを発症したfumiさん。深く落ち込んだ2年間を経て、専門医との出会いにより前を向くことができたと言います。今はブログを通じて、同じように悩み我慢し続けている人たちへ向け情報を発信しているfumiさんに、これまでの歩みをお話しいただきました。
※本コンテンツにはじんましんの症状の写真を含みます
- 突然じんましんが発症、寝不足などQOL(生活の質)がダウン
- 大学病院を受診。原因探しではなく「症状が出ない状態」を目標に
- 自分の状態をメモしておくこと、我慢せず早めに受診することがおすすめ
じんましんの突然の襲撃、お風呂が怖くなった日々
私が慢性特発性じんましんを発症したのは、2019年の6月30日のことでした。お風呂に入った後、全身にじんましんが出ました。日付まで正確に覚えているのは、あまりに突然の出来事だったから。前兆はまったくありませんでした。
最初は白い小さなプツプツで、ピンク色、赤色へと変化しながら大きくなり、アメーバのようにくっついて広がっていく。患部は灼熱のように熱く、激しいかゆみに襲われました。6時間以内で症状は治まるものの、その間はひたすら氷のうで冷やし続けるしかありません。それが毎日、1週間ほど続きました。
症状が出るのはお風呂の後だったので、「またじんましんが出るだろうな」と覚悟を決めて、おびえながらお風呂に入る毎日でした。布団に入っても、全身のかゆみでなかなか寝付けません。寝不足のまま朝をむかえて、体を引きずるように出勤する。確実にQOL(生活の質)が下がっていきました。
<じんましんが発症した時の写真。太ももや足の甲、首、背中などにあらわれた>
何とか治したい一心で、近くの皮膚科を受診しました。でも、そこで提案されたのは別の皮膚病の治療法。「じんましんの治療をするために受診したのになぜ?」と違和感がありました。納得がいかずアレルギー検査をいろいろと受けましたが、これという明確な原因はわからず、モヤモヤだけがつのっていきました。
その後新たに受診した皮膚科で抗ヒスタミン薬の処方を受け、しばらく症状が治まったのですが、薬をしばらく飲まないと症状がぶり返してしまう。別の持病が原因かも?と循環器内科を受診して、無関係だとわかって途方にくれたこともありました。「原因を突き止めたい、原因を取りのぞけば治るはずだ」と思っていたのに、何ひとつ手がかりが得られない暗闇の中にいるようでした。
多くの人が経験する「じんましん」だから、
なかなか辛さが伝わらない
これまで大きな病気もせず健康に過ごしてきた私にとって、「いつまでこの生活が続くのか」という、先が見えない精神的負担は想像以上に重いものでした。やがて思考はどんどんネガティブになっていきました。
さらに辛かったのは、じんましんの“見えにくさ”です。私の場合は職場では症状が出ず、家に帰ってホッとした時やお風呂上がりに症状が出るため、第三者から見ると、“健康な人”に見えてしまうのです。じんましんの辛さも、寝不足も、心の疲れも、外からは見えません。周囲に打ち明けても、じんましんは多くの人が一度は経験するものですから、軽く受け止められてしまいます。最初はじんましんから始まったのに、次第に心への影響が大きくなっていって、家でよく泣いていました。
発症から2年弱が経ったある日のこと。それまでお風呂上がりに限られていたじんましんが、帰宅直後や夕食後など、タイミングを選ばず発症するようになり、回数も量も急激に増えていきました。「これは今までとは違う、専門の先生に診てもらわなければダメだ」と決意し、大学病院を受診することにしました。
受診する時は、自分の状態を的確に伝えようと、メモを作りました。じんましんはいつ頃から発症したか、どこに出やすいか、受診した病院と処方薬の履歴、希望する治療や検査、日常的に使っている洗剤や化粧品のリストまで細かく書き出しました。
また、通院には夫に付き添ってもらいました。メンタルが落ち込んでいる時や、あまり眠れなくて頭が回らない時は、医師の話を正確に理解することが難しくなります。一緒に話を聞いてくれる伴走者がいてくれたことは、心強い支えでした。
「原因追求ではなく、症状が出ない状態を目指そう」
―マインドを変えた医師の言葉
大学病院の初診で、ついに「慢性特発性じんましん」という診断名がつきました。病名が明確になったことで、「やっとここからスタートできる、この病気に向き合って頑張ろう」と、覚悟が決まりました。専門医が最初に治療ステップを説明してくださったことも、不安を解消してくれました。
<症状や食事内容をノートにメモするなど、細やかな記録が医師との会話に役立った。>
そして、何よりも私の考え方を変えてくれたのが、専門医の言葉でした。
「じんましんは、約8割が原因を特定できないと言われているんです[1]。原因を特定しようと苦しむのではなく、まずは『症状が出ない状態を作る』ことを目標に治療していきましょう」
それまで原因探しに執着し、原因が見つからないと苦しんでいた私にとって、この言葉は目の前がパッと開けるような衝撃でした。「原因を見つけることにフォーカスするのではなく、とにかく今、目の前の症状を出さないようにする。そのために治療をするんだ」と、マインドセットを切り替えることができたのです。
「一歩ずつ前進している」と感じられたことが、治療のモチベーションに
それからは、じんましんの治療ステップに沿って段階的に薬を試していきました。「一歩ずつ前進している、治療が進んでいる」と実感できたことは、治療のモチベーションになりました。また、私はいろいろ質問したいタイプなのですが、専門医が丁寧にコミュニケーションしてくださることも、治療に前向きになれる理由になっています。今はじんましんの量や回数は減り、かゆみのない生活を取り戻すことができています。
<今では、茶摘みにチャレンジしたり旅行したりと、趣味を楽しんでいる>
同じ悩みを抱えている方にお伝えしたいのは、「早めに皮膚科を受診してください」ということです。「この程度で病院に行っていいのかな」と我慢しないでほしいです。
また、日頃から、症状が出た際の様子をスマートフォンで撮影しておくのがおすすめです。スマートフォンなら、撮影した日時が自動で記録されるので、出やすい時間やタイミング、出やすい体の場所といった傾向をトラッキングでき、自分の“じんましんマップ”を作ることができます。医師から症状を聞かれた際にも、とても役立ちますよ。
「慢性特発性じんましん」の治療を経て今思うのは、自分だけで抱えこまず、早く治療を受けることが大切だったなということです。じんましんは自分でも軽視してしまいがちになる病気ですが、気になっている方は、ぜひ皮膚科を受診してください。
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R Saito, et al. J Dermatol. 2022 Dec; 49(12):1255-1262.